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医療ビッグデータ・コンソーシアム

医療ビッグデータ・コンソーシアム

2016.01.15

医療ビッグデータ・コンソーシアムは2015年12月14日、日本プレスセンターの会見場で政策提言の記者発表を行った。
当日はNHK、日経新聞、毎日新聞、共同通信、じほう、化学工業日報、日経BP、ケアネットなど一般紙、通信社、専門誌、ニュースサイト、合わせて23媒体・37名の記者が集まった。

医療ビッグデータ・コンソーシアムからは代表世話人の本庶佑氏(先端医療振興財団理事長、静岡県公立大学法人理事長、京都大学大学院医学研究科客員教授)、小宮山宏氏(三菱総合研究所理事長)、小島明氏(政策研究大学院大学理事)のほか、政策提言研究部会座長の中山健夫氏(京都大学医学研究科健康医学専攻教授)とヘルスケア研究部会座長の宮田裕章氏(慶應義塾大学医療政策・管理学教室教授)が会見に参加した。


会見の冒頭に挨拶した代表世話人統括の本庶佑氏は、「2009年から21世紀医療フォーラムという、医師、大学人、企業、メディアの有識者集団を組織して日本の医療の課題を独自の観点から議論してきた。2013年には、菅義偉官房長官に対し、予防医学の予算拡充、医療費が増大しないような医療制度の改革、国民のリテラシーが高まるような政策をすべき、の3点を提言した。医療ビッグデータについても議論を重ね、今回の政策提言をまとめた」と、同コンソーシアムが提言をまとめた背景を説明した。

それに続いてもう一人の代表世話人統括の小宮山宏氏は、「これからは国民自身も考え、判断し、医療者と相談しながら医療を受け、予防についても考えるようになる。そのためにも医療ビッグデータが活用されていくべきだ」と語った上で医療ビッグデータを利用した産業育成にも言及し、「医療に関わるデータがつながって新しい価値を生み出すべきだ。大規模ゲノムのような研究機関のデータと久山研究などのコホート研究のデータが連結すれば、新たな産業が生まれるし、健康増進にもつながる。大きく言うと国民の死生観という価値観まで影響する。環境やエネルギーと並んで健康という分野でデータをつなぐことが重要だ」と述べた。

そのほかの代表世話人、研究部会座長の発言要旨は以下の通り。

小島明氏の発言要旨
「ICTの発達によりいろいろな情報がつながっている。おそらく21世紀の早い段階で世界中の産業、経済、ライフスタイルが劇的に変わる。日本はそれぞれの分野の能力は高いが、そのデータがつながれていないに先に進めないでいる。まず突破口として医療分野で情報をつなぐことができればそこから他の分野にも広がり、日本の21世紀の産業を育成することになるのではないか」。

中山健夫氏の発言要旨
「データはデータのままでは役に立たない。データはきちんとした知恵と知識によって解釈されて初めて問題解決に役立つ情報になる。医療ビッグデータも同じ、このままではビッグデータであってビッグ情報ではない。ビッグデータをいかに情報化していくかということに私たちの知恵が試されている。そして重要なことは個人がこれからの自分を知る手がかりは、今までの自分自身の情報とほかの人たちの情報から得られる。つまり、ビッグデータは我々一人一人が作り上げていくものだ。自分のためが半分、誰かのためが半分という認識を持ち、情報を共有していくという考え方が必要だ」と強調した。

宮田裕章氏の発言要旨
「日本が人口減少を伴う少子高齢化をどう克服するか、世界の国々が注目している。2025年に向けて医療のニーズは増大していくがそこだけに合わせて制度を作ってしまうと、その後の世代が社会保障を受けられなくなってしまう。データをつながなくても医療はできているではないかという意見もあるが、それでは非常に無駄が多い。一例を挙げると日本の医療機関の在院日数は欧米の3倍。DPCや診療報酬のデータをつないで患者の安全に配慮した上で在院日数を短縮すると年間1.3兆円の医療費を削減できる。データをつないで、情報を共有することで質もコストも両立することが可能になる」。

最後に代表世話人の本庶佑氏は、「今日はビッグデータをつなぐ、活かす、変えるという話をしたが、その前にビッグデータを作ることも重要になってくる。大規模なゲノムコホートを行う必要があるということだ。全国に10拠点くらいの施設を作り、日本中で100万人くらいの健康な人のあらゆるデータを集め、どういう遺伝的背景の人が、どういう生活習慣をすると病気になるのか?を調べることで予防医学、先制医療がきちんと捉えることができるようになる。予算は10年間で1000億円と試算している。
チップのなかにその人の遺伝情報や医療記録、投薬情報などが入っていれば、医療機関の診断にも役立つほか医療費の削減にもなる。ぜひ、こうしたことに国が積極的になって欲しい」と述べた。

12月14日 記者会見の質疑応答概要

記者A:「つなぐ、活かす、変える」ということを国に要望されていくということですが、具体的に国に対してどういった制度変更を求めていかれるのですか?

宮田裕章氏:さきほど私の方からも話させていただきましたが、たとえば厚生労働省では「保健医療2035」ということで20年後のあるべき姿を考えている。それ以外にも塩崎厚労相の諮問機関や内閣官房の次世代ICT基盤協議会もあり、(20年後の)あるべき姿をオール省庁で考えている。この提言はそこと志を同じくしながらも、民間の視点、行政主導の議論とは違う形で見えてくるものを訴えている。
電子カルテをどうするとか個別の技術的な課題はあるが、大きなビジョンとしては、まずはつなげられるところからつなげていく。プライバシーの問題で進展しない点については、データの活用によって開ける未来を皆様に伝えていく。そして行政側とも活用に向けたディスカッションをしていくことになる。

記者A:「活かす」という点については、製薬産業についてはどういった「活かす」方法があるのか?

宮田裕章氏:これまでは公的なデータを民間(営利)企業が使うことに対して、良い使い方もあれば悪い使い方もあるということで、(省庁側が)かなり保守的で、敷居が高かった。
だが、薬害が出た場合にそれをデータからいち早く察知して対策を考えていく。民間も主たるプレイヤーとして一緒に役割を果たしていこうとしている。私もこの会合に入って民間企業の方々とお話しするようになり、その点に関する意識の高さに感銘を受けました。
民間利用だから一律に悪いと言うのではなく、志の高い企業と一緒に良い医療を築いていく、パートナーシップを考えていくことが「データを活かす」ことになる。

記者B:提言書の13頁にあるMID-NETのように、既に動き出している取り組みがどのくらいあるのでしょうか?また、データの標準化については、今すぐつなげば使える状況にあるのでしょうか?

宮田裕章氏:電子カルテについてはSS-MIX2という電子カルテの標準形式でデータをつなごうとしているが、同じ形式でも実際につないでみるとなかなか難しい問題がある。
次世代ICT基盤協議会でも電子カルテやレセプトの統合に関する議論をしている。
ただ、それだけですべてが解決するわけではなく、マイナンバーや医療等IDでつなげられるのであれば、健康診断情報や保険者(国保や健保連)の情報などもつないでいけるのではないか。つないで活用していくことで、また見えてくるものもある。

記者C:提言を極めて興味深く読ませていただきました。提言書のなかに「新しい産業を育成していく」とあるが、企業が医療のビッグデータを扱うことは障壁があるのではないか?もう一つ、この医療ビッグデータのなかにおける「新規産業」とは何を意味しているのか、もう少し具体的に教えてほしい。

宮田裕章氏:一つは医療機器、医薬品です。日本は総資産1600兆円と言われていますが、うち1500兆円は団塊の世代よりも上の世代が持っていて、これから彼らの医療や介護のニーズが高まると、そこにサービスが集中していくことになる。
しかし、医療機器にしても医薬品にしても、日本企業が供給するものよりも外資が供給していく方が多くなる。つまり外資にお金が流れていく。 ここでビッグデータを使って、このデバイスを作ればどういうインパクトがあるか、どのくらいの市場が見込めるかを予測できれば開発期間やコストが大幅に短縮できる。我々があるデバイスメーカーと試算したときには開発コストを1/5に下げることができ、(外資よりも)優位に立てた。
もう一つ、タミフルで死亡例が出た時の例を挙げると、あのときに薬が悪いのか、投与の仕方が悪いのか、重症例が続いた必然だったのか、誰もわからなかった。
それもデータがそろっていれば、どこに問題があって、どういう対応をすれば良いのかわかる。これは製薬企業にとってだけでなく社会全体の安心につながる。
まずは医療機器、医薬品企業との健全な連携が可能になるのではないだろうか。

記者C:最初の質問、医療ビッグデータに営利企業が触れていくことについてはどうお考えですか?

宮田裕章氏:製薬企業は、今までは自分たちで集めたデータで研究・開発をしてきたが、ディオバン問題でも明らかになったように、誰が、どこで、どのように集めたデータなのか検証がしづらい。そうではなく、医療ビッグデータを共通のプラットホームとして使うことで、透明性と再現性を担保したデータサイエンスが可能となるのではないか。

中山健夫氏:1点追加です。ビッグデータは学会等の公的な団体で作るものと、ウェアラブルデバイスなどで民間が作るものが出てくる。今後、この両者を合わせて新しいデータ解析をしようとする動きが出てくるだろうが、その際には民間企業であっても「どんな解析をしているのか」、透明性を持ってやっていってほしい。

「医療ビッグデータ・コンソーシアム 政策提言 2015」はこちら(PDF)
「提言の概念図」はこちら(PDF)